傷ついてもいい
大通りから店の入口まで戻ると、直己が月を見上げて立っていた。

綺麗な横顔をしばらく盗み見る。

「あ、佳奈さん」

直己が佳奈に気づいてニッコリと笑った。

「お待たせ。行こっか」

佳奈は、そう言うと直己と並んで駅に向かって歩いた。

賑やかな街を二人で無言のまま歩く。

どうしてだか、言葉が出てこなかった。

直己も同じように感じているのか、手をポケットに突っ込んで佳奈の隣をゆっくりと歩いている。

「あのさ、直己」

「うん?」

「ほんとに月、綺麗だね」

言ってから、何を言ってるんだ、と佳奈は恥ずかしくなる。

直己は、黙って月を見上げて、うん、と言ってくれた。

「佳奈さんは、太陽っていうより、月だよね」

「ああ。そうかも」

確かに地味だし、目立たないし。そうかもしれない。

「直己や由奈は太陽みたいだもんねえ」

佳奈は、さっきまで、みていた由奈の華やかな姿を思い出す。

「確かに由奈ちゃんは、太陽みたいだよね」

直己は、そう言ってまた月を見上げた。

「けど、俺は、そんなんじゃないよ」

「…」

直己の声が寂しくて、佳奈は言葉をなくしてしまった。
< 153 / 179 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop