傷ついてもいい
朝。

休みだという直己に、まだ寝ている由奈を頼み、佳奈は部屋を出た。

「おはようございます」


エレベーター前で斎藤に会う。

「おはようございます」


佳奈はぺこりと頭を下げた。


「なんか誤解されてると思ったんで言いわけしてもいいですか」

斎藤がエレベーターの中で言う。

「はい?誤解ですか?」

佳奈は聞き返した。

「うん、あの、花村さんの名前が嫁さんと同じだったから」

「あ、はい」

「俺、それとは関係なく花村さんと話してるのが凄く楽しいんです。だからできたらまた、一緒に食事とか行きたいな、と思ってて。もちろん迷惑だったら断ってください」

チン、とエレベーターが一階に到着した。

「これ、俺の連絡先が書いてあります。良かったら連絡ください」

「あ、はい…」


斎藤は、佳奈にメモを渡すと、じゃ、と言って駐車場のほうへ歩いていった。


佳奈は、駅までの道を歩きながらそのメモを見た。

携帯の番号とアドレスがあり、その下に「連絡待っています。斎藤 翔太」

と書いてある。

翔太って名前なんだ。なんか可愛いな。

落ち着いてみえるけれど、わりに強引で積極的だし、頭も良さそうだし。

佳奈は、少しずつ斎藤に惹かれはじめていた。


< 54 / 179 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop