月光花
そのような話を耳にすると、やはり信じてしまう。都市伝説を真っ先に否定する者達が、必死になっているのだから。
言葉と行動は、一致しないということなのか。
それなら認めてしまえばいいのだが、立場上そのようにいかないのだろう。科学者と研究者は、つまらない職業だ。
「そうだ! お前、バイク乗れたよな」
「免許は、持っているよ」
「なら、貸してやるよ。俺達は、これくらいしかできないけどな。ガソリン代は、気にしなくていい」
「……有難う」
それ以上の言葉を言うことができなかった。感謝しても、感謝しきれない。友人関係だと思っていても、所詮は他人同士。
中高時代の友人達だったら、ここまで手伝ってくれるとは思わない。
大学に入って、真の――心から信頼できる友人達に出会えたのは奇跡に等しい。
俺は再び感謝の言葉を口にすると、ネット上に記されていた廃屋へ向かう。
しかし其処で、俺は究極と呼べる選択を強いられた。それはあまりにも不条理で、簡単に決められる内容ではない。
その時に、全ての意味合いを知る。何かを得ると同時に、それに等しい何かを失うということを。
そして、それは――
◇◆◇◆◇◆
何とも言い難いねっとりとした生暖かい風が、全身に纏わり付く。
それは熱帯夜特有のジメっとした感じというわけではなく、この世の者ではない何かが現れそうな雰囲気に近い。
俺はバイクを止めると、周囲を確認するように視線を走らす。
訪れた場所は、町外れであったが都会の一部分に変わりない。
しかし物音ひとつせず静まり返り、ゴーストタウンという言葉が似合う。
ふと、目の前に建つ廃屋が視界に飛び込む。
これは洋館と呼ばれている建物か、全ての窓という窓に板が打ち付けてあり、白かった壁は薄汚れ蔦が幾重にも絡まっている。
これだけを見ると〈月光花〉が咲いている場所というより、廃墟マニアが喜びそうな場所といっていい。
俺は勇気を振り絞ると所々が崩れたレンガ造りの壁を攀じ登り、
敷地内へ立ち入る。そして地面に足が着地した瞬間、刈り取られず延び放題の草に足を滑らせてしまった。
更に不幸は続くもので滑ったと同時に身体のバランスを崩してしまい、思いっきり尻餅をついてしまった。