バスボムに、愛を込めて
ええと、つまり今のって。疲れていれば手を貸してくれる――そしてまた繋いで歩いてくれる――ってこと?
「本郷さん! あたしってば鈍いから今になって極度の疲労が!」
慌てて彼のもとに駆け寄ると、本郷さんはやれやれというように鼻から息を洩らし、少し下がっていた黒縁眼鏡を中指で押し上げた。
「見え透いた嘘はいいからさっさと手を出せ」
「は、はいっ」
まさか、帰りも手を繋いでもらえるなんて。
疲れはそこで一気に吹き飛び、開かれた本郷さんの大きな手に自分の手を重ねる。
最初はあたしより彼の方が少しあたたかかった手の温度は、次第に近づいて、同じになって。
穏やかな波の音と、心地よい胸の高鳴りを耳の奥で聞きながら、あたしは本郷さんの隣にいられる幸せを、ずっと噛み締めていた。