バスボムに、愛を込めて
電車に乗って、本郷さんの降りる駅に着いてしまえばそれでもう、お別れ。
あたしはそれが、デートの終わりだと思っていたのに。
「家まで送る」と言って譲らない彼は、あたしの家の最寄り駅で降り、今もなおあたしの右側を歩いてくれている。
その手にあたしの右手をしっかり握りながら。
「休みが明けたら、展示会の打ち合わせがあるだろうな」
すっかり暗くなった川沿いの道。
ぽつぽつと並ぶ街灯の明かりの下で、本郷さんがあたしに話しかける。
「そうですね。あたしたち、何をお手伝いすることになるんでしょう」
「恐らく、前いた部門を手伝うんじゃないか? 俺はメンズコスメ、お前はベースメイクを」
「別行動、かぁ……」
仕事なんだから当たり前だし、いざ当日になったら寂しいなんて思う暇もないだろうけど。
デートの余韻に浸っている今は、思わず口からそんな言葉が零れてしまう。
「会場は広いから、迷子になったりするなよ?」
「なりませんよ! いくら落ち着きのないあたしでも!」
「自覚はあるんだな」
……ばかにされてる。
だけどその横顔は柔らかく微笑んでいるから、怒るどころか胸キュンだよ、全くもう。