HAIJI
「…ユキノ、シーナのご飯を作りたい」
「シーナ、元気になったの?」
「すこし」
「そう!よかった!あとで台所に来て」
「うん」
「ロンド、」
「うん?」
「本当によかったね」
ユキノが嬉しそうにロンドの手を握ると、ロンドは少しだけ口許を緩めた。
「うん、」
前髪がさらりと風に揺れて覗いた目は、とても柔らかかった。
その後紹介されたハイジは35人。
その中にはスラムで産まれた子供もいて頭が痛くなった。
男女比は6対4くらい。
イチイとヨイはスラムの中でも一番古く中心的な存在であり、一番の年長者だった。
スラムの西側。
「ここは、穴堀。──お墓」
そこには小さな山が沢山あった。
それぞれの山には木片のようなものが立てられている──墓標だろうか。
「これ、僕のお兄ちゃん」
ナナタがひとつの山へと駆け寄る。
一度俺を振り返って、そして静かに手を合わせた。
「お兄ちゃん、僕ね、昨日ミートスパゲティを食べたよ。すごく美味しかったよ」
ユキノも並んで手を合わせた。
俺はどうするべきか、しばらく立ち尽くしていた。
会ったこともないのにどうしていいのかわからなかったからだ。
こういうことは慣れていない。
「ここに来ればね、僕はいつでもお兄ちゃんに会えるんだ」
そう言ったナナタは、少し強がってるように見えた。