HAIJI
「はい、ササライ」
出された皿にはシチューらしきものが盛られている。
視線を上げると、ナナタがニコリと笑っていた。
「ありがとう」
少し離れたところに他のハイジたちも輪になっている。
ナナタは俺の隣に座った。
ナナタの膝の上に置いてある皿の上には、シチューとは別のものが乗せられていた。
「それ、何?」
聞くと、ナナタはいたずらっぽい表情をしてそれをつまみ上げる。
「蛙」
俺は思いきり顔をしかめ、身体を引いてしまった。
「結構美味しいんだよ」
ナナタはつまんだ蛙を口の中に放り込んだ。
「……。」
蛙なんて食べるのか。
食用があることは聞いたことがある。
本当に食べるのか。
「裏の山に沢山いるんだって」
「誰が?」
「ヨイ。あと、ミカド」
ミカドの顔を輪の中から探す。
真ん中で歌を歌っている男だ。
「ここではね、スラムの外に出られるのはヨイとミカド、あと、イチイくらいなんだ。とっても危ないから」
ナナタはもうひとつ、蛙を口に入れた。
なんのための保護区域かと言われれば必然的な話だ。
「僕もね、大きくなったらヨイやミカドみたいに、皆のために外で仕事がしたい。そのためには強くならなきゃ駄目なんだ。足も早くなきゃ駄目だって、ミカドが言ってた」
小さな拳を握り締めるナナタ。