HAIJI



「ササライ、」


 腕を持ち上げられる。
 それでも俺は動けなかった。


「ササライ、立て」


 脇から身体を持ち上げられる。


「しっかり見ろ。現実を」


 誰かが言う。

 立つ気もなかったが、そもそも抵抗する気も起きない。
 支えられながら、足を引き摺るようにして外に出る。

 外の光は眩しかった。
 朝のようだ。
 肌寒い。


 いつもハイジたちが集まる少し開けた場所に、いつものようにハイジが集まっている。
 その中心には小さな身体が横たわっていた。
 小さな、小さな身体。
 少し離れたところから見ても、もう動かないことはわかる。
 あれがシーナだろう。
 その傍らには男が座ったいる。
 男の身体は起き上がってはいるがじっと俯いたまま、ピクリとも動かない。
 それでも男はしばらくすれば動くのだろう。
 他のハイジは立ったまま、祈るように手を組んでいる。

 俺も引き摺られるままにその傍に寄る。

 シーナの顔が視界に飛び込んできた。


 息が止まった。


 心臓が、ドクリ、と大きな音を立てた。










 俺の記憶は、そこで途切れた。





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