HAIJI
もうどれくらいの時間が過ぎたのかもわからなかった。
夢なのか、現実なのかもわからない。
ただ、骨と皮だけになったシーナの姿が頭の中に貼り付いている。
目を閉じていても、開けていても、あの動かない不気味な人形のようなものがまるで俺に付きまとっているように。
「ササライ、ササライ、」
いつもと違う高さの声に、抵抗、というか、違和感のようなものが僅かに俺の心をざわつかせた。
俺は、思わず顔を上げた。
──ヨイだ。
俺の目は、久しぶりに生きた人間を認識した。
「ササライ、落ち着いて聞け」
「……?」
「ナナタがちょっとヤバイことになった」
ヨイは少し早口で言った。
「えーと、何日前からだ」
ヨイの話は、俺が眠ってるのか起きてるのかわからない、記憶が曖昧なところから始まった。
俺はシーナの亡骸を見た途端に倒れたらしい。
何も食べてなく、体力も精神力も落ちて、寝てるのか寝てないのかもわからない状態だった状態でシーナの姿が相当な衝撃だったようだ。
ナナタが心配しないわけはなかった。
ナナタが行方不明になったのは、その直後だったようだ。
フェンスの中がある程度広いとはいえ、けして隠れられるものではない。
そもそも隠れる理由はない。