HAIJI
フェンスの外に出たと推理するにはさほど時間はかからなかった。
外の世界というのがハイジにとってとても危険だということはナナタも認識していたはず。
だからこそイチイとヨイ、あとはミカドしか外へは出られないことになっていた。
わざわざ出る必要もないはずだった。
それが──、
「それで、さっき外で見つけた」
居なくなって三日目のことだったようだ。
俺には全く時間の感覚はないが。
昼間は明るいときには外の人間の差別の的になるため、ヨイとミカドでも外で行動するのは専ら夜のようだ。
「丸一日全然見つからなくてな。で、ユキノがもしかしたらっつーんで探した場所が、イモ畑だった」
しかし、ヨイの表情は未だに固かった。
「鼠取りに引っ掛かってた」
「……、?」
ヨイの表情とは裏腹に、間の抜けた単語が戸惑う。
「農家は、特にこの辺りは土地が広いから、ハイジ対策で鼠取りを畑の周りに仕掛けてる」
「鼠…取りで、ハイジを……?」
「ハイジ用だ。思いっきり踏めば足が折れる」
ぞ、っとした。
「ナ、ナナタは……、」
「左足がイってる」
深刻に、だけど冷静にヨイは言った。
「幸い、外の人間には見つかってなかった」
瞬間、俺の脳裏に、骨と皮だけになったシーナの姿が過る。
カタカタと身体が震えた。