地の棺(完)
「土地神についてどこまで聞いてる?」


初ちゃんは最初にそう聞いてきた。

わたしが知っているのは、志摩家の屋敷の下に大きな穴があって、そこに女性が一年間も閉じ込められていたこと。

出入りするには崖の下に続く小さな横穴を通るしかなく、女性はその穴の中で動物や人間を食し生きていたということ。

それをそのまま伝えると、初君は声を立てて笑う。


「それはまた、雪に都合がいい話しかされてないね」


「どういう意味?」


「女性がどうしてそういう目にあったと思う?」


それは全く見当もつかない。

雪君は『地の翼』と呼ばれる土地神による神隠しだと、そう島の人々は言っていた、といったけど。

そう言うと、初ちゃんは吹き出した。


「ないね。神隠しでそんな目に合うなんて馬鹿馬鹿しい。
蜜花は面白いね、それで納得したんだ」


なんだか恥ずかしくなって黙り込む。

別にわたしは神様の存在を信じていたわけじゃない。

でも神隠しとか、土地神とか、わたしには全く縁のない世界の話って気がして、言われるまま受け入れた部分はあった。


「自分が落ちてもわかんない?
ここは屋敷に住む人間じゃないと、簡単には場所がわからないって」


言われてみて、確かにその通りだと思った。

足はかなり痛い。

でも折れているほどではないと思う。

掘り返したばかりの柔らかい土ならまだしも、硬い地面に落ちても軽症で済んだ理由、それは少なくとも人が落ちた衝撃で命を失うほどの高さはないということだ。

そんな穴の中に人がいて、果たして誰も気付かないなんてことがあるのだろうか?

三雲さんは偶然地下室に通じる穴を見つけたといっていた。

でもそれは本当は偶然じゃない?
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