地の棺(完)
「わかった?
そう、ここに女がいたのは、この家に住む人間が閉じ込めたから、だよ」


初君の声が、静かな穴の中に響く。

それはわたしをの心に、大きな衝撃を与える言葉だった。


「見つかった女は精神に異常をきたしていて、そこでの事をなにも話せなくなっていたから、真実は闇の中だけどさ。

出ようと試みたのか、女の指は一枚残らず爪がはがれ、闇の中にいたせいで失明していた」


淡々とした口調で語られたその話は、」とても怖くて悲しい。

誰がそんなことをしたのか、何故女性がそんな目にあったのか。

謎は謎のまま残り、闇へと消された。

今自分がいる場所がその穴だということも、わたしを動揺させている原因なことは間違いない。

次の初ちゃんの言葉は、わたしを更に激しく揺さぶった。


「柚子からは聞いてなかったの?」


柚子?


「なんで姉さんの名前が……」


「聞いてない、か。その様子だと」


初君はそのまま口を噤む。

でもわたしは姉の名前を聞いた以上、黙っていられるわけない。

手探りで初君を探す。


「お願い、もっと詳しく教えて」


やはり初君は無言だった。
< 128 / 198 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop