地の棺(完)
快さんの表情が険しくなる。

変なことをいう女だと呆れられただろうか。

でもわたしは自分の感情を抑えることができなくなっていた。


「そうです。事故の現場は、地獄と表現するのが正しいと思うくらいの惨状でした。

破壊された飛行機の残骸、炎にまかれ黒く焼け焦げた死体、そして散らばる人の手足。

今でも忘れることができません。

でもひとつだけ、霞がかかったような不明瞭な記憶があるんです。

薄れる意識の中で見た、人を食べる少年の姿が……」


「人を食べる、少年」


快さんの言葉がわたしの体を通り抜ける。

どんな表情をしているのか、わたしはそれを確認するのが怖かった。

そんな少年いなかった。
人が食べられた痕跡はなかった。

そういって奇異な目を向けた医者を思い出し、俯く。

両親でさえも信じてくれなかった。

だからこの記憶はわたしの混乱した意識が生み出したものだと、そう思いこもうとしてきた。

でも……


「快さん。その少年は、姉さんの頭をわたしに見せました。
柚子姉さんの妹だと知っていたんです。

ひょっとしたら、彼がわたしをここに呼び寄せたのかもしれません」


自分の声が耳に痛い。

高ぶる感情のせいで息苦しくて、胸を両手で抑えた。


「快さん、わたし……どうしたら……」


「その話、誰かにした?」


低い快さんの声。

今まで聞いたことがないような鋭さが含まれていて、戸惑い、顔を上げる。

わたしを見つめる快さんと視線が重なった。
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