地の棺(完)
「君は……事故の後、遷延性意識障害となった。
回復の見込みがほぼ絶望と言われていたのに、五年もの年月を経て突然目覚めた。

君が意識を取り戻したことは奇跡に近いとされ、再びマスコミに取り上げられ、既に過去のものとなっていた飛行機事故も注目を集めた」


いつもの気さくな雰囲気は消え、淡々とした口調で語るその表情は、桔梗さんに良く似ていた。

ああ、親子なんだな、なんて改めて思ったりして。

快さんがなにを考えているのかわからなくて怖い。

わたしを疑っているんだろうか。

亘一さんのようにどこかに監禁されたらどうしよう。

不安でめまいがしそうだった。


「何故、三年もたってから、そんなものが送られて来たのか。

俺がちょっと調べただけでも、当時の君の事は容易に知ることができる。

だから、その手紙の差出人も、君が三年も前に目覚めたことは知っているはず。

ってことは、今になって君をここに呼び出したい理由ができたってことか」


そう言って快さんは大きなため息を吐いた。


「快さん……」


「ん?」


「わたしのこと、疑ってるんじゃないんですか?」


「なんで?」


なんでって。違うの?

張りつめていた糸が切れたみたいに、わたしの体から力が抜けていく。


「蜜花ちゃん? 大丈夫?」


「いや、はい。だ、大丈夫です」


「疑ってるとかじゃないよ。柚ちゃんの妹だしね」


そう言ってわたしを快さんは微笑んだ。
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