地の棺(完)
それはわたしではなく、その向こうにある姉を見ているような、そんな目だった。

やっぱり、姉の恋人って……


「快さん、あの……」


姉と付き合ってたんですか? と、聞こうとしたその時。

ドアを数回ノックする音がして、わたしは立ち上がった。

快さんと顔を見合わせる。

部屋に広がる緊張感。

またなにか起こったのではないか。

そう思うと、二人供返事をするのをためらった。


「快さん? ちょっといいですか?」


聞こえてきたのは神原さんの声だった。

その落ち着いたトーンに、ほっとして体の力が抜ける。


「どうぞ」


快さんが声をかけると、ドアノブを回し、疲れた表情の神原さんが入ってきた。

その後ろには憮然とした顔のシゲさんもいる。


「すみません。奥様が快さんをお呼びなのですが」


桔梗さんが?

快さんは露骨に顔をしかめた。


「雪が一緒にいるんじゃないの?」


「そうなんですが……」


言葉を濁す神原さんの隣で、シゲさんが、


「お前の母ちゃん、なんかヒステリー起こしてっぞ。
行ってやったほうがいいんじゃねぇの?」


と悪態をついた。

快さんは肩をすくめる。


「ヒステリーはいつものことなんだけどね。
理由は椿のことでしょ?」


快さんの口から出た椿さんの名前にはっとする。

穴に落ちたことですっかり忘れてたけど、わたしは椿さんを迎えに行こうとしていたんだった。


「椿さん…… あの、椿さんは無事なんですか?」
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