【2/4 番外編追加】一夜の恋じゃ終われない 〜冷徹ホテル王の甘い執着〜
4、一夜の恋じゃ終われない side臣海
「久遠さま、お呼びでしょうか?」
ファーストクラス右窓側の俺の席に、担当CAである菜月がやって来た。
「ああ、クリュッグとアミューズを頼む」
「かしこまりました、少々お待ちくださいませ」
「あっ、ちょっと待った」
すました顔で立ち去ろうとするのを俺が呼び止めると、彼女は下唇を噛み、少し怒ったような顔で振り返る。
しかしさすがにそこはプロだ。すぐに格式ばった笑顔を浮かべて「はい、なんでございますか?」と首を傾げてみせた。
「ワインもいいかな。北見さんはどう思う? 君のおすすめは?」
彼女の反応を楽しみつつニヤニヤしながら問いかけると、菜月は俺が開いているドリンクリストを指差しながら、「こちらのワインはカリフォルニア産のカベルネ・ソーヴィニヨンで……」とスラスラと説明をはじめる。
さすが俺の菜月、ワイン講座を受講しているだけあるな。
ちゃんと俺の目を見て話さないのはいただけないが、まあこの状況では致し方ないだろう。