【コミカライズ配信中】婚約破棄したお馬鹿な王子はほっといて、悪役令嬢は精霊の森で幸せになります。(連載版)

五十二

「えっと、サーティーア国から新婚旅行ですね」
 
「はい、そうです」
「奥様はファーレズ語が上手ですね。これが王都の旅行ガイドとマップです」

「ありがとう、ございます」

 ファーレズの国境を通るとき、この国に来た理由を"新婚旅行"だと入国書に書いた。その通知は王都にとどいていて、王都の門でも新婚旅行といえば通じる。

 あとはかるい審査を受け、通行料を払えばいい。

「確認は終わりました、どうぞお通りください。ようこそ、ファーレズ国へ」

「ありがとうございます。行きましょう、あなた」

「………‥おう」

 やはり国境と同じで、王都の門番はグルとエルモ――二人分の通行料しかとらなかった。
 
 ということは、他の人にグレちゃんの姿はみえない。
 いや魔力を待つものがいたら見えていたかも。そのときはグルの魔法で記憶をけして、姿を消す手筈だった。

(国境と門。どちらでもグレちゃんの姿はみえないか……となれば、この国ではヒロインのリリアさんと魔法省の人くらいしか、グレちゃんの姿はみえないかも)

 でもよかった。白トラが王都にでたと騒ぎになるよりいい。と、エルモがいろいろ考える横で。

「…….ハァ、初めから勝敗の結果がわかっていたが。グルとのカケはオレの勝ちだな。国境の警備騎士と王都の門番はオレの姿が見えていなかった!」

「クソッ、兄貴とのカケに負けた。まれに見える人がいると思ったんだがな……国境と門にいなかった」

 グルとグレは"カケ"に勝ったか負けたかを言っている。

(こっちはみえたらどうするって、心配していたのに……)
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