蒼の王国〜金の姫の腕輪〜

継がれたもの

‡〜目覚めて〜‡

目を覚ましたのは、祖父の誕生日から五日が経った昼だった。
こんなにも深く深く眠ったのは、いったいいつぶりだったのだろう。
メイドや使用人達には心配させたかもしれない。
父と祖父、春臣は私とは逆にほとんど眠れなかったと後で聞いた。

目を覚ました時、一番初めに目に入ってきたのは、ほっとした顔の春臣だった。
一拍後、その顔を引き締め、『おはようございます』と言って部屋を出ていった。
子どもの様に一緒に寝てもらうなど、呆れられてしまったかもしれない。
静かに反省し、ベッドを出た。

着替えて部屋を出れば、メイド達が軽い食事を用意してくれた。
食べ終わる頃、父が屋敷に飛び込んで来た。
ちゃんと会うのは、半月ぶりだろう。

「蒼葉っ…よかった〜。
三日たっても目を覚まさないなんて事一年ぶりで…今日で五日…どうしようかと…」
「ごめんなさい。
無理をしていたのはわかっていたんだけど、そんなに眠るとは…」
「いやっいいんだよ。
君が元気になったんなら…」
「ええ。
久しぶりにとても気分が良い」
「そうか…」

本当に心から安堵する父の様子に、ほんのり心が温かくなった。

「お義父さんも心配していたから、後で電話してくると思うよ」
「うん…そんな気がする…?」
「…ふふ。
柚月くんなら、僕に君が起きた事を伝えて、今頃僕と入れ違いに猛スピードで仕事してると思うよ」
「…?…なぜ…」
「わからないかい?
君が目を覚まさないから、心配で仕事に集中できなかったらしくてね。
三日前からちょこちょこ仕事をここに持ち込んで、会社を休んでたんだよ」
「仕事を…」
「あっ休んで良いって言ったのは勿論僕だよ。
君の様子を教えてくれる人がいた方が安心だからね」
「ごめんなさい…本当にそんなに心配を掛けていたなんて…」
「心配したよ。
当然だろ?」
「…ごめんなさい…」
「うん?
違うよ。
こういう時は”ありがとう”だよ」
「はい…ありがとうございます」


< 11 / 150 >

この作品をシェア

pagetop