蒼の王国〜金の姫の腕輪〜

秘密の庭園

‡〜二つの手紙〜‡

祖父の屋敷から戻ると、すぐに部屋であの燃やされた紙の復元にかかった。
一瞬だったが、しっかりと記憶された内容は、一気に書き上げてから改めてゆっくりと目を通した。

一枚目
−−−
愛する姫へ祈りを込めて。

『今もクリスタルの棺に眠る姫の、安らかな眠りが長く続きますように』

扉を固定した。

エルフの王の恩情により、我らはこの地へとやってきた。
あれから早五年。
時さえ計れば、故郷へと帰る事もできる。
ただ、姫の顔を見る為に特別な者だけは、鍵があればいつでも扉を開き、こちらとあちらを行き来できる。
会ってはいないが、バルトは数日に一度こちらへと来ているようだ。
彼は、いずれこちらの世界に移り住むと言う。
姫と再び巡り合う為に…。
私もお会いする事ができるだろうか…。
姫のように記憶はなくても、願わくは再び同じ時を同じ場所で…。

−第三騎士、グルーヴ・ラジル−
−−−


二枚目
−−−
扉への地図。
『満月の夜、扉は開く』

『発動呪文(旧カルナ国語へ)−月満ちる光、右手に時を、左手に願いを、たどりし道の扉を開く−』

−−−


地図は、近くにある山を示している。
おそらくここが、初めに手に入れた土地だったのだろう。
そして、今日盗まれた十字架は、おそらく彼らの言う”鍵”だ。
誰が持っていた物かは知らない。
この一枚目を読む限りでは、これを書いたグルーヴの物ではない。
ならば…。

「バルト…バルト・オークス…」

彼の物かもしれない。
何にせよ、道は示されている。
見てみたい。
あの国が今どうなっているのか。
行ってこの目で確かめたい。
後悔するかもしれない。
けれど、けじめをつけなくてはならないと思う。
あちらには、あの頃生きていた者がまだ健在のはずだ。
あれから約二百年。
エルフは長命だ、混血である師匠ラダにも会うことができるだろう。

会ってくれるだろうか…。
全てを任せて死んだ私に怒っているだろうか…。
師匠は怒っているだろう。
きっと、『面倒な事を任せてんじゃねぇッ』とか言って思いっきり投げ飛ばされそうだ。
しっかり身体を鍛えてから会おうと決意して、箱に大切に二枚の紙をしまった。



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