★★★★★
11頁に人生の全てを詰め込んだような
そんな短編。

読み終わった後に、分厚い小説を読み終えたかのような充足のため息が漏れました。

ラストは薄々予想できたのですが、その最後の1頁、最後の一文に読者の共感(あるいは、自分が「私」になったような感覚)を誘うために必要な言葉がすべて、前の10頁に仕込まれているのです。
素晴らしい筆力が秘められた作品だと思いました。

敢えて言うならば、
実話かと思えるほどに人物像や世界が作り込まれており、
この数十年に渡る家族の物語を短編にとどめてしまうのは勿体ない気がしました。
本来は長編作品に値する世界をダイジェストで見ているような、そんな感覚といったらいいでしょうか。

良質な作品に出会えた「充足」と、
もっと読んでいたかったという「渇望」。
両方味わえる作品です。

秋の夜長に、ゆっくりお読みください。
うさのじゅん
12/10/29 23:48

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