咲倉ゆら さんのレビュー一覧
白いひつじさんにこう聞かれました。 「しあわせになれた?」 私はこう答えます。 はい。 とてもしあわせになりました。 とてもあたたかいお話を、ありがとうございます。
作品を読んでいる間中、主人公が抱える感情に支配されていました。 これ以上はないくらいに愛されているのに、どこか拭えない不安。 優しい笑顔で、キスで、いくら振り払われても纏わりついてくる得体の知れないモノに。 その正体を知ったとき、グサリと胸を刺されました。 男だから、女だから。 男でなければ、女でなければ。 性別がなければ。 だけど、ソレがあるからこその関係。 これ以上の幸せはないし、これ以上の苦しみもない。 終わらないことの幸せ。終わらないことの苦しみ。 逃れたくて、逃れたくなくて……。 2人が最後に選ぶモノがなんなのか、私には分からない。 どちらが幸せだとも言えない。 ただ、辛い。 このふたつの感情を同じところに同居させながら生きるのは。 辛い。 どうしようもなく。
題名の通り、色んな人が、色んな事柄を『隠して』いる物語。 殺人事件の裏に隠された真相、秘密、人の想い…… それらが見事に絡み合い、ラストまで一気に読まされます。 お堅い話なのかと思いきや、ところどころに入る笑いがこれまた絶妙。 本格人情的(お笑い)ミステリー。 どうそ、お手にとってみてください。
ギリシャ神話の世界を舞台に、5年前に消えた友人を助けに行く、少年と少女の物語。 神話に詳しくなくとも、丁寧な文体ですぐに物語の世界へと誘われます。 この作品、いえ、この作者様の書かれる物語の一番の魅力は、登場人物の純粋さではないでしょうか。 友人のために必死になって、困難、苦難に立ち向かう勇気、きちんと前にあるものを受け止め、慈しむことの出来る優しさ。 そんな主人公たちを囲む者たちもまた、温かい。 読み終えたあと、とても優しくなれます。 是非、お手にとってみてください。