祈りのいらない世界で〜幼なじみの5人〜【実話】
「キヨ?どうした」



キヨとカゼの話し声を聞きつけたイノリが玄関に来た。

キヨはイノリに抱きつく。





「カゼがっ…行っちゃったよ!!止めたのに!これ以上不幸になってほしくないのに…」

「キヨ…」




イノリはキヨを抱き上げると自分の部屋へと連れていった。


部屋に入るとイノリはキヨをベッドの上に座らせ、その横に座る。




「よしよし。泣くな」



イノリはキヨの髪をぐしゃぐしゃとかき回す。





「だってカゼ、絶対利用されてるよ。そんなの嫌だ!カゼが幸せにならないなんて嫌」


「…なぁキヨ?もしお前にどうしようもなく好きな奴がいて、そいつに本命の彼女がいてもお前とも付き合ってくれたら複雑だけど嬉しくねぇか?」


「……一時は嬉しいかも」


「だろ?今カゼはそうなんだよ。利用されてたとしても好きな奴といられて嬉しいんだよ。……大丈夫、あいつはケンと違ってバカじゃねぇ。今は自分を見失ってるけど、目が醒めれば自分が何してんのか気付くから」




イノリはキヨの頭を撫でながら呟いた。

キヨは優しい瞳をするイノリを見つめる。




「キヨは優し過ぎんだなぁ。もう少し自分の事を考えろよ」

「…自分の事を考えてるから優しくするんだよ。離れて行って欲しくないから…」

「優しくなんかしなくても離れて行きやしねぇよ。もう少し俺らを信じろよ」




イノリはキヨの額を指で小突いた。
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