捨て猫にパン
…え。


や…見ず知らずの男の人に?


痴漢から助けてもらった上、タクシー代まで?


「あの…!困りますっ」


「いいからさ、ヤな事忘れなよ」


「あっ、あっ…!ちゃんと往復分、払わせていただきますっ」


「いいよ。これから痴漢、気を付けてね」


「やっ、えっ、そうなんですけど…ちゃ、ちゃんとお詫びというかお礼というか…だから、あの、その…!家で、あの…お、お茶でもいかがでしょう…と、いうか…」


「オレが?」


「ハ、ハイッ!運転手さんではなく、その…あなた様に…」


「ふぅん。それで気が済みそ?」


「ハイ。せめてそのぐらいは…」


「そ。じゃ、寄らせてもらおうか」


「あ…ありがとうございます…」


「じゃ、スイマセン。ここで降ります」


男の人が運転手に告げるのを聞きながらタクシーを降り、アパートの2階へ駆け上がって鍵を開けた。
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