捨て猫にパン
「メイ、俺と真琴は目の前のコンビニで会っただけなんだが」


「って…えっ!?」


「メイ先輩、ナイです」


「ナイ、って、それもヒデーな、真琴」


おかしな誤解を引きずるよりいいですってばっ!


「何?何ッ!?2人ともまだなのっ?」


「ですから、まだとかもナイです」


メイ先輩は心底がっかりした様子で眉をひそめて、陣主任に何やら耳打ち。


主任は真っ赤な顔をして、わざとらしい咳払いを1つした。


「とにかくっ、ナイもんはナイッ」


「なーんだ、つまんないのぉ。あ、それより真琴、その手どーしたの!?」


メイ先輩は内出血だらけのあたしの両手を取って、陣主任に見せた。


「ひどくない?」


「あ…ハイ…。実は、えーっと…昨日、色々ありまして…」


「ん?風邪で熱じゃなかったのか?」


メイ先輩の大きな勘違いと気配りのせいで、昨日の一件を隠すこともできず。


痴漢にあって、助けてくれた倉持さんがあたしを家まで送ってくれたこと、今日の車出勤のことを話してしまった。
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