捨て猫にパン
「やーっ!真琴ぉ、災難だったねぇ?痴漢とかマジ許せないっ」


「ふーん…。わざわざ助けてくれた上に、車まで?その男の方が怪しくねぇか?」


「全然ッ!怪しくナイですっ、いい人ですっ」


…って。


どうしてかな、倉持さんを弁護してしまうあたし…。


「う~ん…。真琴さぁ、陣主任の言う通りかもよ?なんでアカの他人がそこまでしてくれちゃうワケ?」


「さ、さぁ…?」


「なんかさ、思い出さね?ガキの頃、学校帰りに見つけた捨て猫ほっとけなくて、給食の残りのパンやっちゃうみたいなヤツ。最後まで面倒見きれないなら無責任な優しさとかヤメロよ、って感じだよな」


「む、無責任とかじゃナイですっ!」


「もしかして真琴、その殿方に恋しちゃったりなんか?」


「ち、違いますっ!!あのっ!そろそろ勤務時間なのでっ!あ、あたし着替えてきますっ!」


しどろもどろにはぐらかして、あたしはその場から逃げるように更衣室へ入った。


制服に着替えてデスクにつくと、まだ何か言いたそうな陣主任だったけど、メイ先輩のプラン成就祝いなる飲み会の話が盛り上がり、それきり仕事に専念、倉持さんの話は出なかった。
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