捨て猫にパン
「───!!」


太ももに別の力が加わり、気持ち悪い手がスッと退く。


「ヤメロよ、痴漢オヤジ!!」


───ッ!!


誰かが…助けて、くれ、た…?


───プシュー


排気音とともに扉が開き、あたしは誰かに強く手を引かれる。


「ハイッ、降ります。道あけてください」


静かな渋めの声が注目を浴びて、あたしと誰か、痴漢とおぼしきオヤジ、3人で電車を降りる。


プラットホーム。


強く握られた手はそのままに、人気のない階段脇に人混みをかき分けて移動する。


俯いて泣いたままのあたしの目に見えるのはコンクリートだけで、助けてくれた人も痴漢のオヤジも写らない。
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