捨て猫にパン
「元気、だったかな」


「ハイ…」


「真琴ちゃん、嘘が下手だね」


「…え?」


「ちっとも元気そうじゃない」


「そんな風に…見えます、か?」


「うん」


陣にも。


あたしはそんな風に写ってるのかな…。


「捨て猫って、何?」


「ハイ…。あたしは倉持さんにとって、ただの捨て猫なんです」


「うん」


「痴漢から助けてくれて、あたしを会社まで車で送ってくれる気まぐれは、捨て猫に給食の残りのパンをあげちゃうような、無責任な…っ…っ…優しさ、です…」


「そんな風にしか受け取ってもらえなかったんだ」


「…っ…っ…!だって…だって…!わからないんです…っ!どうして?どうして何も言ってくれないの?あたしは倉持さんの手が欲しかった。一緒に手を繋いで、一緒に歩いてくれる距離が欲しかった…!なのに倉持さんは…!」


「大人の恋って、難しいな」


…───恋…?
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