捨て猫にパン
ヤダ…。


まだ太ももに汚い手が擦り回っている不快な感触が、爪の食い込んだオヤジの皮膚が残ってる。


気持ち悪い…気持ち悪い…ッ!!


早く帰って、この不潔な体を洗い流したい…!


気持ち悪い…気持ち悪いよ…。


あたしは鞄を持つ手を離し、グッと唇に押し当て、めいっぱいの力で手の甲を噛む。


嫌なことや、どうしようもなく迷った時にする癖。


力一杯自分の手を噛む。


噛んで噛んで、涙と少し血の混じったような味。


あたしが受けた屈辱の味。


汚い、気持ち悪い味。


あ…、って小さな隣の声と同時に、そっと右手の甲があたしの口からゆっくりはがされた。
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