舞う風のように
「…斎藤、永倉。」
無言で震えていた土方は、後ろに立つ者たちの名前を呼ぶ。
その二人も返事をすると抜刀した。
「…何のつもり?」
笑顔のまま、敬語を外し問い掛けると、土方は薄く笑みを浮かべた。
「…てめぇは怪しい。無理矢理でも屯所まで来てもらおうか。」
それは困る。強引な。
「…人には人の事情がある。」
三人を警戒しながら、土方に刀を向けると一気に斬り込んだ。
響く金属音。
飛び散る火花。
間一髪で受け止めた土方は、その一撃の重さや速さに呆然とした。
(…やはり、こいつは只者じゃねぇ。)
土方は、俺の刀を受け止めるのが精一杯のようで一向に攻めてこない。
いや、迂闊に動けない。攻められなかった。
土方は小さく舌打ちをする。
長州にこんな強い奴が居たなんてなーーーー