ロスト・クロニクル~前編~
だが、ラルフのように魔法を学ばない生徒は違う。
薬草学も高度な領域まで踏み込んで教えられ、そ後で、遊びに行かせて頂きます。
れらを調合できるようにならないといけない。
つまりラルフは、エイルより調合が上手いことが当たり前。
それをエイル任せに行おうとしていたのだから、困ったものと嘆く。
「それに、器用と不器用があるし」
「そういう問題じゃない?」
「意地悪」
「いつものラルフに戻ったことは嬉しいけど、面倒なことは増やさないでほしいよ。なあ、こう考えるのはどうかな? 指定された薬を素早く調合し提出すれば、少しは印象が変わるかもしれない」
「そ、そうかな」
「要するに、やる気とか」
「な、なるほど」
その言葉によって忘れていたジグレッドの説教を思い出したラルフは、エイルの言葉に同意してしまう。
ここで少しでも良い印象を与えれば、ジグレッドの説教時間が短縮される可能性が高い。
そう考えたラルフは意気揚々と部屋から出て行くが、エイルの台詞には続きがあった。
しかしそのことを言う前に、ラルフは出て行ってしまったので肝心な部分は言えないでいた。
「お前の場合、積もりに積もっているから……どちらにせよ、回避は不可能だと思う。まあ、いいか」
誰もいない空間に向かい、エイルはポツリと呟いた。
このことをラルフが聞いていたら、どのような反応を見せていただろう。
へこむことは間違いだろうが、エイルにしてみたら完全な自業自得。
こうなる要因を作ってしまったラルフが悪いので、怒られることは仕方がなかった。
「お手並み、拝見かな」
所詮、それは自分のことではなく他人事。
特に“ラルフ”という人物なら尚更である。
エイルは不適な笑みを浮かべると、自室に戻り授業の準備をはじめる。
そして、運命の授業が開始された。
◇◆◇◆◇◆
午後の授業の開始を知らせる鐘の音が、青空に響き渡った。
それと同時に合同授業に参加する生徒達は、一斉に学園の裏手に広がるハーブ園の前に集合する。
無論、遅刻する生徒などいない。
もしいたとしたらそれはかなりの大物で、それだけ単位に自信があるということだろう。