イジワル上司に恋をして
「なっちゃん……知らないんだ?」
「え? な、なにがです?」
「うちのケーキなんて、クリスマスは余ることなんかないはずよ。全部はけちゃって」
「……え?」

え……でも、昨日のはちゃんとうちのホテルの紙ナプキンが添えられて……。
じゃあ昨日のあれは……手に入れるの大変だったんじゃ……。

「おはよう」

絶妙? いや、最悪のタイミングで現れたのは、話の渦中のアイツ。

「あれ? 黒川くん、おはよう。もう少しゆっくりしてから来るのかと思ってたけど」
「結局仕事は仕事だし。なんか落ち着かないから」
「ふぅん……あれ? なんかいい香りするね。いつもと違う香りだ」
「……気のせいじゃないか?」

二人の会話を目の当たりにしているわたしは、心臓がはちきれそう。
この場から去りたいけど、足が動かず。

……お願い香耶さん! それ以上そこに突っ込まないで!!

渾身の力を込めて小さく手を合わせて祈ると、いつの間にか香耶さんの視線がわたしに向けられていて……。

「あ~。なるほどねぇ。なっちゃん、センスいいね。この香り」
「!!」

ボッと顔から火が出たわたしを見て、香耶さんはケラケラと笑った。
恥ずかしくて潤んだ瞳になったわたしは香耶さんの奥にいる優哉をちらりと窺う。

すると、ヤツもちょっとだけ頬を赤くしてプイッとそっぽを向いてしまった。

……コイツでも照れることあるんだー。

――なんて、少し珍しい顔を見れて得した気もしたのは黙っておこう。


そんな優哉との初めてのクリスマス。
きっと一生忘れなさそう。




おわり


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