謝罪のプライド


「前に坂巻さんの歓迎会で連れて行ったところかも」

「ああ、美味かった。でも俺はやっぱかつやのカツ丼が一番好きだけどな。仕事落ち着いたら食いに行こうぜ?」

「明日じゃだめなの?」

「明日は多分残業。と言うか、坂巻の研修終わるまではチョイ忙しいな。そういや、お前んトコにも電話なかったか営業の田中から」

「ああ、導入するマシンに付いて悩んでたやつ?」

「なんとなくだけど、アイツ、客の要望聞ききれてないんだよなぁ。ちょっと揉めるかもしれんぞ、あれ」

「えー……」

それは嫌だな。
頑張ってよ、田中さん。


いつの間にか仕事の話にスライドしてしまって、美乃里とのこともそれ以上は追求できなくなった。

仕事の話をしている時の彼はイキイキとしていて、私がたった一日で虜になってしまったあの時を思い出す。

あの頃は、彼が振り向いてくれるだけで十分幸せになれたのに、今はもっと深い愛情表現が欲しくてたまらない。



一緒にいるのに胸の穴が埋まらないのは、私が贅沢になったからなの?



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