謝罪のプライド

そして時は過ぎ、あっという間に美乃里の研修期間が終わる。

【今日は送別会?】

浩生にそうメールすると、すぐに返事が帰ってくる。

【ああ。多分遅くなる】

【いつでも来ていいよ。呑んだ後お腹すくんでしょ】

来て欲しいといえば重たくなる気がして、それだけを書いて送信した。
浩生に結婚の意志がないと分かってから、余計臆病になってしまった気がする。


その日は一日落ち着かなかった。

美乃里だって、もし浩生に本気ならば今日は頑張りどころなはずだ。
それは、自分もそうだったからよく分かる。

家に帰ってからも落ち着かず、テレビをつけながらぼんやりとそれを眺めた。

今頃、浩生と美乃里は呑んでるのかしら。
まあ今日は送別会だから他のCEさんもたくさんいるはずだけど。

夜の九時がすぎ、十時になる。
もうさすがに一次会は終わった頃だなぁ。

時計の進みが遅い。
時間は意地悪な生き物だ。
早く過ぎて欲しいような時間こそ辛く長い。

テレビも雑誌も頭に入らないから、誰かと話して気を紛らわせたい。
もしかしたら彼氏がいて邪魔しちゃうかもだけど、亜結に電話しよう。

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