謝罪のプライド

『はい、もしもしぃ。初音?』


電話の向こうはガヤガヤしていた。
どうやらまだ外にいるらしい。


「亜結、ごめん。忙しい?」

『忙しくはないけど外なの。何かあった?』

「ううん。何でもない」

『なんでもなくてアンタ電話してこないでしょうが』


流石親友。
その辺はすっかり悟られているのね。

押し黙っているとクスクスと笑い声が聞こえてくる。


『今ね、彼と飲んでるの。初音も出ておいでよ。』

「でも……」


もし浩生が来たら。
私がいなかったら帰っちゃうんじゃないかしら。

それに邪魔だよね、完全に。


『なに? それとも彼氏が来るの?』

「ううん。浩生は今日は飲み会。でも呑んだ後はよく来るから」

『じゃあいいじゃない。どうせ合鍵持ってるんでしょ。メールでも入れておけばいなくても怒られないわよ。子供じゃあるまいし』

「それもそうか」


あっさりと言われて心が軽くなる。
やっぱり、一人で考えこんでるのって良くないのかも。


「邪魔じゃない?」

『初音なら大歓迎よ』

「じゃあ行く」

『待ってる』


あっさりした返答に今日の中で一番気持ちが軽くなった。
困ったときに頼れる誰かがいるのは本当に有り難いなぁ。


【ちょっと亜結と飲んでくる。勝手に入っててもいいよ】


浩生にはそうメールを入れて、私は早速着替え始めた。


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