謝罪のプライド
手を離されて顔をあげると、浩生はもう私を見ていなかった。
突き放されてしまったようで、ひどく心細くなる。
浩生は酷い。傲慢だ。
私に、不安に怯えるのさえ許してくれない。
「浩生」
「俺のことが嫌なら付き合ってる必要なんかない」
なんでそこまで話が飛躍するのよ。
私はただ、ごめんって言って欲しいだけ。
不安にさせてごめんって。
その一言が欲しいだけなのに。
「待ってよ。私は」
「勝手にしろ」
浩生の声が冷たく響き、彼は背中を向けたまま煙草に火をつけた。
「ひろ……」
「気が変わった。飯は行かない。今日は帰れよ」
待って。
手を離さないで。
こんな態度に出られてようやく焦る。
私は何をしてしまったんだろう。
浩生が慌ててくれることも、謝ってくれることも、あるはずないのに。
でももし、謝ってくれたなら。
私は特別なんだって自信持てるんじゃないかなんて、淡い期待もどこかにあった。
馬鹿な私。
彼に嫌われるくらいなら、我慢している方がずっと良かったのに。
「とっとと行け!」
浩生はなぜか、自分のほうが先には動かなかった。
私は、完全に拒絶している背中に何も言うことが出来ず、後退りしながら表通りに出てそのまま歩き出した。