謝罪のプライド

鍋というからいつもの海鮮か鶏かと思っていたけれど、数家くんが頼んでくれた料理は和風ポトフだった。
ごぼうの香りが食欲をそそる。


「この夏イチオシで出そうと思ってるんだよね。調理場では基本的な味付けしかしてない至ってシンプルなものなんだけど、それが夏の疲れた胃にはいい。そして、それでは物足りないって人にはこれ」


数家くんが指さしたのはテーブルの端。メニューやお箸、お塩なんかが置かれているスペースだ。
よくよく見ると、先日よりも調味料が増えている。


「テーブルでアレンジってのを浸透させたいなって思って。先日から設置したんだ。和風ポトフは一番アレンジしがいがあるんだよ。まずは生姜」


取り分けたお皿に少しだけ生姜を添える。すると口当たりが凄くさっぱりした。


「美味しい」

「でしょ。にんにくバージョンはこっちだよ。あ、ビールもドンドン飲んでね」


食べ終わる前に次のがよそられる。私は一度ビールで口に残る味をリセットすると次なるアレンジに挑戦する。

その他に唐辛子バージョンとコンソメバージョンを食べた。
コンソメが、一気に味を変えてくるので面白い。
いろんな味が楽しめるせいかついつい食べ過ぎてしまった。


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