謝罪のプライド
『初音か? 頼みがあるんだ、システムに行って東峰ロジスティックに導入したプログラムの概要聞いてきてくれないか。田中じゃ埓があかない』
「あ、それならさっき聞いてきたけど」
『そうか。さすがだな。じゃあ……』
最初に浩生と電話してから、まだ一時間しか経っていない。
今東峰ロジスティックにいるなら、さっきの電話の後直接向かったってことだ。
浩生も一軒予定が入っていたはずだったから、てっきりその後に行くものだとばかり思っていたのに。
「ひ……九坂さんのお客様は大丈夫ですか?」
『そっちは遅れる連絡を入れた。定期メンテナンスだから了承してくれた。詫びもちゃんと入れてある』
「浩生が謝ったの?」
“謝らない男”と言われた浩生が?
思わず素っ頓狂な声で問いかけると、呆れたような声が返ってくる。
『お前は俺をなんだと思ってるんだよ。百パーセント自分が悪ければ俺だって謝ることくらいある』
「でも」
『もちろんただじゃ済ませないけどな。田中のヤローは後でごってり絞ってやる』
「……でも」
任せろ、と言ってくれた。
私はそれが嬉しかったけれど、そのせいで彼が謝ることになるなんて想像もしてなくて。
自分の甘えがひどく情けなくなる。