謝罪のプライド
実際、酔ってはいなかった。お酒は飲んだけど、たしなみ程度の量だ。だけど、怖くなった私にはお酒のせいにするしか他に方法が無かった。
「酔ってます」
だから。
もし何かが起こっても、期待なんかしないから。
お願い帰らないで。
ギュッと握っている手に力を込める。
「そうか。じゃあ」
そういった彼は、次の瞬間私の顎を持ち上げて顔を寄せた。
……そして、ものすごい近距離で言ってのけたのだ。
「ちゃんと寝ろ。酔っぱらい」
そのまま手を離され、彼はすたすたと歩いて行く。
私は彼の後ろ姿を最後まで見続けることが出来なかった。潤んだ視界の中で彼が景色に溶け込んでしまって。
泣きながら、階段を上り部屋へ入る。
振られたんだ、と改めて思うとますます涙が溢れ出てきた。
来週から違う部署で良かった。泣き続けて変な顔になっても、九坂さんには見られない。
そのまま服を脱ぎ捨てて、浴室へ直行した。アパートの壁は薄いから、思い切り泣くには、シャワーの音が必要だ。
人生最大の恋を、すべてシャワーとともに流してしまえたらと願った。