謝罪のプライド
「今日は酒なしで話そう」
「はあ」
真顔でそんなことを言われると焦る。
酒なしでは離したくないほど醜態を晒していたかしら。
そんなことないよね。
最後の最後で羽目外しちゃっただけだよ。
注文のカツ丼が来て、手を合わせて頂きますをしてから食べ始める。
ガツガツ食べる九坂さんはいつもの通り。でも私は、あんなに美味しかったカツ丼が、喉が詰まって入っていかない。
「今でもそう思うか?」
「え?」
話が通じない。考えにふけっている内に、何か聞き逃してしまったのかも知れなかった。
「すみません、何の話ですか?」
「覚えていないくらい酔ってたのか?」
「は?」
咬み合わない会話の合間に、九坂さんがカツ丼をかっこむものだから、くちゃくちゃと噛む音が混ざって余計判別しにくい。
「九坂さん、意味が分からない」
「酔ってなくてもこの間みたいに思うのかって聞いてる」
一瞬時が止まったように感じて改めて彼をまじまじと見ると、飄々とした顔の中で瞳だけが照れたように泳いでいる。
「お、思います」
「本当か」
「本当です。いつも思ってます。今も思ってます」
「食欲より性欲か」
「ちょ、食堂でなんてこと言うですかぁー!」
思わず立ち上がって反論した私の声があまりにも大きくて、周りの人の視線をさらってしまう。
真っ赤になって座り込んだら、九坂さんは肩を震わせて笑っている。
その表情は妙に色っぽくて、私の全身を熱っぽくさせた。