謝罪のプライド

私の手を消毒し、絆創膏をつけてくれている間、じっと顔を見ているとなんとなく思い出せそうな気がするんだけど、記憶はモヤモヤしたままではっきりとした像は結ばない。


「はい、終わりましたよ。新沼様」

「え? 名前」

「ご予約で伺ったし。……それに、覚えてないですかね。俺のこと」


眼前でにっこりと笑う。

え? やっぱり知ってる人?

細いけれど意志は強そうな目。薄い唇は笑みの形。あっさりしているけれど整った顔。
もう一度マジマジと見てみるけれど、やっぱり思い出せない。


「ご、ごめんなさい。どこかで会ったことあるかしら」

「俺、数家光流(かずや みつる)と言います。やっぱり覚えてないかぁ。高二の時、一緒のクラスだったんですけど」


彼は残念そうに笑って頭を書く。

一瞬ポカンとそれを見つめていた私は、高校時代の記憶をフルスピードで反芻した。

名前は覚えてる。名前みたいな名字だから気になっていて。
でも人物像が出てこないな。

高二、高二。修学旅行も行ったじゃん。
このくらいのイケメンなら何かしら記憶に残っていてもいいはずなのに。


「俺、目立たなかったしね。髪型もボサーってしてて」


前髪を垂らす仕草をされて、ようやく記憶に引っかかった。

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