謝罪のプライド
「あ、あー!」
いた。
でも私の記憶にある数家くんは確かすっごい無愛想で女子とは話さないような感じで。
私が学級委員をしていた時だけ事務的に話したくらいで。
……え? ここ来てからほぼ笑顔しか見てないけど。いつからこんなに愛想良くなったのよ。
それに、前髪も長くて目はどこーって感じだったし、もうちょっと太ってたし。どちらかと言えば不衛生な印象で。……こんなに爽やかだったか? って感じだけど。
「あ、あの数家くん?」
「新沼初音さんだよね。あんまり変わってないからすぐ分かった」
「数家くんは変わりすぎじゃない? え? 嘘だ!」
思わず大声が出て、厨房が一瞬静まる。私は焦って周りを見て、真っ赤になって顔を押させた。
「ヤダごめん」
数家くんは小さく笑いを噛み殺している。
「嘘じゃないよ。そんなに変わったかな。……いやー、面白いな新沼さん」
肩が震えているわよ。
いやだって、あなたそんな風に笑う人じゃなかったでしょう。
「分かってなさそうだったから声掛けようか迷ってたんだけど。思わぬきっかけがあって良かった」
「良かったじゃないよ。なんであんな迷惑客にペコペコ謝ってんの! プライド無いの?」
いや、私も仕事の時はヘコヘコしてるけどさ。