謝罪のプライド
結局、もう眠くもないのに意地を張って布団をかぶって彼のたてる音に耳をそばだてていた。
テレビを見て笑いながら、ズルズルと汁をすする音。立ち上がって、流しに茶碗を置いた音。冷蔵庫を開けて、お茶……かな、なにか飲んでる。トイレの音も歯磨きの音も聞こえた。
もう寝るだけでしょうにテレビの音はいつまでも消えない。
明日は日曜とは言えもう深夜だし、隣の部屋の人にも申し訳ないな。早く寝てくれたらいいのに。
気を回しすぎるのは悪い癖だと浩生には言われるけど、やっぱり気になる。
でも、自分からこっちに来てというのは負けたみたいで悔しい。
もうしばらく待ってみるか。
けれど、そこから十分たっても浩生は動く気配が無い。深夜バラエティが始まったのかガハハと笑い出して、声がますます気になる。
内心で葛藤を繰り返して、さらに十分。
「……浩生」
負けたような気分で声をかけると、浩生は私に背中を向けたまま「んー?」と生返事をする。
「寝ないの?」
「食い過ぎて寝れねー」
「でももう遅いし」
「お前こそ眠いんじゃなかったの? 俺が居ないと寝れない?」
どこまでも上からこられることにムカついて。でも半分くらいは本当だから何も言えなくなる。