謝罪のプライド

＊
　
　坂巻美乃里の居ない日常は、概ね平和だ。
まあ、常にトラブルと向き合わなきゃいけない部署にいるのだから平和という言い方には若干語弊があるけれど。

美乃里は今週から技術部だ。
浩生は何も言っていなかったけれど、私の時を思い起こせばきっと彼が指導するのだろう。

浩生のことだから、気に入らなければ辛辣な口調で間違いを指摘するようなこともあるだろう。
でも意外と面倒見はいいから、見放したりだけは絶対にしない。
どんなに嫌なこと言われても、浩生には着いて行きたいって思わせるだけの魅力がある。

安心する一方で、腹部に感じるのは不快感。



「胃が痛い……」



美乃里相手に、どんな会話をするの。
私の時みたいに、あのカツ丼屋さんに連れて行っちゃう？　
可愛い顔でめそめそ泣かれて、ほだされちゃったりしないよね。

自分でもイヤになるほど二人のことが気になる。

ダメダメ！　こんな事じゃ浩生に馬鹿にされちゃう。
電話が鳴ったのをきっかけに、頬を叩いて自分を鼓舞した。