謝罪のプライド


 仕事が落ち着いて、携帯を見るとメールが届いていた。学生時代の友達である七尾亜結(ななお あゆ)からだ。


【初音、水曜の夜空いてる? 一緒に御飯食べない?】


 亜結とは高校・大学と一緒の長い付き合いの友達だ。親友と言ってもいい。
だけど私達の関係は女同士にありがちな密接したものでは無かった。
どちらも男っぽい性格だったってのもあるだろう。
互いに別の仕事に着いた今は、半年に一度くらいのゆるい割合でお酒を楽しむ間柄になっていた。


【いいよ。どこに行く?】


そこまで書いて、数家くんのことを思い出す。
高二の時は亜結も同じクラスだ。あんなに変わった数家くんを見たらびっくりするかもしれない。


【いいよ、いい店知ってるから。私に任せて】


当日驚かせるつもりでそう書き直す。三十分後に亜結から来た返事は快い了承だった。
亜結の驚く顔を想像すると、ニヤニヤ笑いが止まらなくなる。

と、その時携帯が鳴る。


「はい、新沼です」

『初音か? 俺』


浩生だ。珍しい、仕事中に携帯になんて。


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