謝罪のプライド

『で、作業終えて喫茶店に来てみれば、ケロッとした顔でコーヒー飲んでるしよ。俺はキレた。やる気ねぇならやめろって言ったら今度は大泣き。……勘弁してくれよ。流石にひどすぎねぇ? お前何指導してきたんだよ』


私のせい?
私だってこの数週間必死に言ってきたよ? 


「ま、まあ、今日は初日だし」

『お前は泣かなかった』

「私だって心では泣いてたよ」


浩生が一瞬黙る。そういやあの時のことで浩生を責めたことは今までなかった。


『とにかく俺には無理だ。担当替えてもらうからな』

「それは私に言われても困るし。技術部で話しなよ」


もはや押し問答。浩生が仕事中にこんなに感情的になるのを見るのは初めてだ。


「とにかく、社に戻ってからちゃんと聞かせて。坂巻さんを宥めた方がいいなら今電話代わってよ」

『いやいい。泣こうが喚こうが、俺の知ったことじゃないからな。ただ、ヘルプデスクで使えるようになるかは俺には分からん』

「そんなの終わってみないと誰も分からないよ。とにかく、迷惑かけてごめんなさい」


結局何故か私が謝る羽目になる。
まあでも、浩生がそう言うのを分かってて、服装の注意をしなかったのは私の落ち度といえば落ち度だ。


『……俺は別にお前に謝って欲しいわけじゃない』

 
一瞬の間が空いたかと思うと、浩生はそんなことをいい電話を切った。
切り替わった電子音を妙に寂しく感じる。


「……じゃあどうすれば良かったの」


ポツリ、呟いた一言は誰の耳にも入らない。


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