謝罪のプライド

 その日、社に戻って来た美乃里は、浩生に言われたのかヘルプデスクに顔を出した。

浩生は大泣きしていたというけど、目の腫れはそれほどでもない。
半分くらいは演技かな、なんて性格悪いことを思う。

私は俯く彼女の肩を叩き、会議室に向かった。


「やらかしちゃったんだって?」


自販機で買ったコーヒーを二つ、テーブルの上に並べる。
美乃里はバツが悪そうに上目遣いで私を見た。


「だってぇ。凄く楽しみにしていったんですよー。憧れの九坂さんに教えてもらえるんだって思って。なのに、なんも言わないですよ。私何にもわからないんだから、指示してくれなきゃ動けないのに」

「それをちゃんと言えばよかったのよ。私はどうすればいいですか? って」

「そんなの指導してくれる人が決めるものじゃないんですかぁ」


そういう考え方は分からないでもない。

少子化の時代に生まれた私達は人から手をかけてもらうことに慣れすぎている。それに、もともと美乃里がいたコールセンターは電話がかかってきて初めて対応するという受け身の部署だ。自分たちから提案することも必要なヘルプデスクとの違いはそこにある。

その意識転換をさせてやらなかったのは私の責任かも知れない。

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