謝罪のプライド

釣られるようにふてくされていると、内線が鳴る。本来一番新米である美乃里が取るべきなのだと思うのだけど、彼女は書類にため息を落とすだけだ。他の人も電話応対の途中なので再び私が出る。


「はい。ヘルプデスク新沼です」

『俺。九坂』

「ひろ……。九坂さん、お疲れ様です」


苛ついていた気分が一瞬で反転した。

耳元に届く深みのある低い声に、彼の姿が浮かんでくる。
長身でがっしりしていて、顔は鋭角的。自信あり気な三白眼は思い出すだけで射抜かれたような気分になる。

電話の主、九坂浩生(くさか ひろお)は我が社の技術部に所属するCE(カスタマエンジニア)であり、私の内緒の恋人でもある。

現金にも自分が電話をとってよかったと安堵し、声はワントーン高くなった。


『クレーム処理のヤツ二件とも、終わらせてきたから』


浩生はいつもの調子で気さくに話しかけてくる。
でも内線ってことは社内でしょ? 誰かに聞かれたらどうするのよ。


「ありがとうございます。助かります」


じっとりと私に注がれる美乃里の眼差しを感じて対外用の口調で話すと、浩生はふっと笑った。
色気のある顔が想像できてしまって、心臓が落ち着かなくなる。


『なんで今日は他人行儀?』

「し、仕事中で……すから。あの」


ドキドキして、顔がニヤついてしまう。
ああダメだ。平常心を保たなくては。
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