謝罪のプライド
5.笑う親友

待ち合わせの駅前にやって来た亜結は、全身から幸せオーラを醸し出していた。
私がじっと見つめていると、「何?」とキョトンとして笑う。

そのさりげない仕草さえ、今日は妙に可愛い。

普段の亜結は私と一緒で、どちらかと言えば見栄えはしない部類に入る。だけど今日は、決してお化粧は濃くないのに、お肌には透明感があり光を放っているようだし、ぷるんとした唇もツヤツヤだ。


「なんか今日綺麗じゃない?」

「そう? いつもと同じだよ」


いや、違うって。
具体的には言えないけど何かが違う。


「でもまあ、色々あったはあったんだけど。それは落ち着いてから話すよ。さ、行こう。初音のオススメってどこ?」

「あ、そうだね。こっち」


亜結と並んで歩き出す。
亜結はショートカットでスーツもパンツスーツが多いから、普段はボーイッシュな印象が強い。今日もご多分に漏れずネイビーのパンツスーツなのだけど、胸元が大きめに空いたインナーのせいか妙に女っぽく見えた。

これはアレだよね。男だよ。
女って、彼氏ができると自然に可愛くなるもんだもん。

私はニヤニヤしながら隣を歩く亜結を見た。
亜結が前の彼氏と別れたのはもう三年ほど前になる。
すごく落ち込んで、もう恋はいいわなんて言っていたくらいだったから心配してたけど、もしそういう報告なのだったら嬉しい。

すぐ先に【U TA GE】が見える。
私は早く話が聞きたくて小走りになった。



< 54 / 218 >

この作品をシェア

pagetop