謝罪のプライド
亜結の話をまとめるとこうだ。
彼氏の名前は清水透也(しみず とうや)さん、三十歳。お兄さんの友達なのだそう。
四ヶ月ほど前、亜結のお兄さんが彼女に振られ、数人の男友達と一緒に飲み明かしていたらしい。で、潰れたお兄さんをアパートまで送ろうとしていたのが清水さん。
お兄さんも亜結も別々に一人暮らしをしているのだけれど、酔ったお兄さんは何故か亜結のアパートを彼に教えたらしい。
「びっくりしたわよ。いきなり深夜三時にやって来たと思ったら一人じゃないし。その時の私、寝ぼけまなこで寝ぐせもついたパジャマ姿よ。出会いとしては最悪だったわ」
想像すると悪いけど笑ってしまう。
慌てふためく寝起きの亜結と、酔っぱらい二人。
深夜にそんな遭遇したら私だったらキレる。
「で、どうしたの?」
「彼は兄貴のアパートだと思ってたから、泊まるつもりでタクシーを帰しちゃったんだって。でもまあとりあえず、私じゃ重たくて兄貴は運べないから、中入ってもらって床に転がして貰って。その後で電話でタクシー呼ぼうって思ったわけだ」
「うんうん」
話している内に亜結の顔が生き生きとしてくる。
口調はイヤイヤっぽいけど、実際は思い出すのも楽しいってところだろう。