謝罪のプライド


「聞いてくださいよー、新沼さん。今日は頑張ってるなって褒められました!」

「ひろ……九坂さんに?」

「ええ。つっけんどんな物言いに慣れたら怖くないですね。やっぱり格好いい!」

「……そう、良かったね」


口ばかりが体のいい言葉を紡ぎだすけど、胃の中が粘着質な何かで満たされてしまったみたいに、ムカムカして気持ち悪い。

美乃里は嬉しそうに、浩生と行ってきた客先の話をする。今日はOSのバージョンアップという簡単な作業だった上に、別のサーバーのメンテナンスで他のCEも来ていたからか、話も弾んだらしい。


「男同士で話しているの見てると、やっぱり九坂さんが一番分かってる感じなんですよね。メンテで来てたCEの三笠さんの方が頼りなく見えて。仕事代わればいいのにってくらいでした」

「そう」


美乃里が嬉しそうに話せば話すほど、胃に溜まってくる不快感。
どうして私こんなに了見が狭いのかしら。


「頑張ってるみたいで嬉しいわ。今日はお疲れ様」

「はい!」


心にもない言葉を告げ、必死に作った笑顔を見せる。美乃里は何の疑問も感じないまま、「お疲れ様でした!」と技術部の方へと駆けていった。私は隠した携帯を出し、送れなかったメールを見てため息を付きながらそれを破棄した。
こんなモヤモヤした気分の自分は、浩生には見せられない。

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